世の中には2種類の人間がいると思う。人の心の痛みが分かる人と分からない人・・・。
人の心の痛みが分かるということは、自分自身が痛みを経験しているから・・・、そしてその痛みから逃げずに耐えた人だから・・・。
人は誰でも、つらい経験をする事がある。しかし、あまりのつらさに痛みを感じる感覚を自ら麻痺させてしまう人もいる。その結果、痛みを感じる心を失い、何があっても涙さえ出ない人間になってしまう。自分の痛みに鈍感になるということは他人の痛みにも鈍感であることだ。そう、私はそういう人間だった・・・。
20代の頃の私は、悲しくても悲しいという感覚がなくなっていた。痛みを感じない心になっていたから苦しくても苦しいと感じなかったし、本当は死ぬほど苦しいはずなのに、平気で生きてこられた。それは無意識の自己防衛反応だったのかもしれない。
実は私は20代で一度死んだのだ・・・。それは精神的な死だ。その頃は心がバラバラになり、生きているのが不思議だというほどだった。毎日、誰かに追いかけられて殺される夢を見ては恐ろしさで眼が覚める日々だった。その頃から私は自分の痛みを感じない人間になっていたのかもしれない。
同じ頃、高校時代の親友が精神を病み自殺した。彼女は私よりはるかに過酷に病んでいた。最後に会ったときは、もう心がすでにこの世の人ではなかった。目の前にいても言葉が届かず、心の在処も分からない状態に見えた。たぶん、精神分裂症(総合失調症)を発症していたのだろう。あらぬ方向を見て、1人で笑い、1人でしゃべり、そして去っていった・・・。
私は彼女が危ない状態だと分かったが、彼女をこの世に引き止めておく術もなかった。自分も同じように危ない状態だったのだから。私は自分の痛みを封じ込める事でかろうじてこの世に生き残る事ができたのだ。そしてその代償として、心の痛みが分からない人間として生きていかねばならなかった。
そんな私にかけられた呪いが、最近やっと解け出してきたように思う。
最近の私はやたら涙もろい。先日、犬の散歩をしている途中、犬好きの郵便配達のおじさんに話し掛けられて、犬の話をしている時になぜか涙ぐんでいた。なぜ、泣いていたのだろう?何か心をおおっていた防具が突然外れたような感じだった。そうしたら、今まで感じなかった人の心が分かるようになってきた。元気に強がっている人が本当は寂しくて不安で、心が泣いているのも見えてきた。痛いのを一生懸命我慢してきたんだね。自分にも他人にもそういうふうに今までの苦しさをねぎらってあげたい気持だ。もう我慢しなくてもいいんだよ、思い切り泣いていいよ。

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